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長野県で設立された唯一の事業再生・事業承継を扱うNPO法人です(平成26年4月現在)

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本の話
本屋さんによる「本の紹介」や書籍業界について

栗林大輔(くりばやし だいすけ)
長野県上田市在住
兜ス安堂・商品企画部
一級販売士、事業再生士補
NPO法人コンティニュー 会員

『「超」入門 失敗の本質』鈴木博毅著、ダイヤモンド社、2012年「超」入門 失敗の本質

勝つためにはゲームを支配している既存のルール(指標)を発見して、それを自分有利に変えろ、というのが印象的。戦略とは『追いかける指標』と明言している。
例えると、出店立地の選定では、どれだけ売上を稼げるか、ということを競合店に勝つための最重要「指標」としてきたが、とにかく月坪家賃が低い、居抜きで建築コストが格安、他テナントとのシナジー効果により広告宣伝費を削減できるなど、投資を最小にすることを新たな勝利への「指標」とする、といったようなことではないだろうか。
 体系的に学習することが苦手で、個々の成功体験に縛られるがゆえに勝利が一過性で終わってしまう。勝利に必要な指標を見つけられず、理論構築もできないから勝利の再現性が限りなく低くなるのだという日本人の弱点の指摘は正鵠を得ていると思う。


『良い戦略 悪い戦略』リチャード・P・ルメルト著、日本経済新聞社、2012年良い戦略、悪い戦略

「良い戦略」と「悪い戦略」の両方とも具体的に説明されているが、「悪い戦略」のほうが印象的であった。「悪い戦略」とは@空疎、A重大な問題に取り組まない。B目標と戦略を取り違えている。C間違った目標を掲げる、の4つらしいが、どれも実際現場でよく見てきた。例えば、レンタル店でいうと、競合店の低価格施策のために売上が20%近くも落ちていることが最大の問題なのに、それに対する解決策が何もなく、担当者の能力不足を最大の問題としてその改善を目標にしてしまうような戦略、というようなことだ。キレイな背景や文字の動くパワーポイントも嫌というほど社内会議で見せられてきた。逆に「良い戦略」とは、解決すべき最重要問題や最重要の機会(チャンス)が的確に把握されていて、それに対する明確な対処法が示されていること。やることが細かくイメージできるという具体性と明瞭さを有していること。さらに、そこに経営資源が集中されていることだという。的確な課題と指標(ゲームを支配するルール)の把握、それに対する具体的対応策、さらに経営資源の集中、戦略構築ではこの3つが大事なのだと考えさせられた。

『生き方』稲盛和夫著、サンマーク出版、2004年生き方

成功へのイメージが将棋の読みのように明確にイメージできることは必ず成功する、という言葉が印象に残る。「努力を積み重ねれば凡才は天才にかわる」「原理原則はシンプルに」「最新の準備と計画なくして成功はありえない」「あふれるほどの夢を描け」など、いっていることは典型的な自己啓発本であるが、稲盛氏の著作となると絶大な説得力を帯びているから不思議だ。それらにつられて80万人もこの本を買っているという、これが「ブランド力」だろうか。人生・仕事の成功=考え方×熱意×能力というおなじみの方程式も登場する。個人的には稲盛氏のベストは『美学 経営と会計』(日経ビジネス人文庫)だと思っているが、どこのブックオフでも必ず売っている。価値を認められ、長く多くの人に読まれている証拠だろう。


『池上彰のやさしい経済学1、2』池上彰著、日本経済新聞社、2012年池上彰のやさしい経済学

題材が身近で、解説もすこぶる丁寧。池上氏の著作では上位に部類されるものではないだろうか。お金や銀行の仕組み、デフレなどの経済現象を解説したものだが、「他人に説明する」ための「説明の仕方」のよき見本になると思う。実際、私が誰かに聞かれたら正確には答えられないだろうな、ということもしっかり解説してくれている。内容が平易で面白く、1日で2冊読んでしまった。






ビジネス統計分析「ビッグデータ」や「データマイニング」が静かな話題になり、これに関連して「微分積分」ものや「統計学」ものの出版点数が増えてきている。統計学を実務で使おうとするならば、理論の解説よりもエクセルを用い実際の使い方を解説しているものがお勧め。
『Excel ビジネス統計分析 ビジテク 2007/2003対応』(末吉正成・末吉美喜著、翔泳社、2009年)
が使いやすかった。


小、中学校のお子様をお持ちの方にお勧めしたいのが親子で学ぶ数学図鑑『親子で学ぶ数学図鑑』(キャロル・ヴォーダマン著、創元社、2012年)
だ。夏休みにレジに置いておいたら2,800円という値段にも関わらずよく売れた。1日3冊以上レジから売れた日もあった。2,800円という高単価の商品がレジでついで買いされる、この本には人を強力に引きつける「何か」があるのだろう。



 私は「実務で使う」ことを目的にビジネス書を読むことが多いので、次のパターンで本を買うことが多くなる。@その分野の大家の定番もの、A解説本、B実務で使えそうなもの、という3点である。@はその理論の本質を押さえるため難解だが敢えて挑戦する。Aは@だけではとうてい理解できないから、Bは実務に利用するためだ。

昨年興味を持った「行動経済学」という学問だと、定番ものとしてダニエル・カーネマンの
『ダニエル・カーネマン 心理と経済を語る』(ダニエル・カールマン著、楽工社2011年)
解説本は『ガブッ!とわかる世界一やさしい行動経済学の教室』(山岡 道雄、浅野 忠克著、アスペクト、2011年)
実務書は『鈴木敏文の実践行動経済学』(鈴木敏文著、朝日新聞出版、2012年)の3冊を読んだ。
 おすすめは鈴木敏文氏の本。内容がとにかく簡単なので2時間くらいで読破できた。価格の違う3つの商品があったら真ん中の価格の商品が一番よく売れる、なぜ1等の当たる確率が1千万分の1の宝くじを喜んで買ってしまうのか、1万円もらうより1万円失うことは2.5倍心理的ダメージが大きい、などを「損失回避性」といった専門用語も交えながら経済理論としてわかりやすく解説してくれる。


『世界経済の大潮流』水野和夫著、太田出版 2012年世界経済の大潮流

水野和夫は三菱UFJモルガン・スタンレー証券を経て現在埼玉大学大学院の客員教授をしている。これ以上の金融緩和やインフレ政策は意味がないとリフレ派を完全否定しているが、ただ否定するのではなく、2003年頃までだったら有効であったが、今ではデフレの質がその時とは全く違っているので意味がないと、その理由をわかりやすく、しっかりと指摘している。経済活動を歴史・地理的背景も踏まえた膨大なデータでもって分析した上に、掲載する資料の選定も的確なので、氏の論説は異常な説得力を帯びる。「説得力」というものはこういうものなのか、ということを思い知らされた。水野先生の著作は全て読むようにしているが、この本のわかりやすさと内容濃さのバランスは最高であった。



『弱くても勝てます 開成高校野球部のセオリー』橋秀実著、新潮社、2012年弱くても勝てます

予想外に売れすぎて出版社品切れが長く続いたため店頭在庫がなく、したがってランキングには表れない隠れたベストセラー。題材となった開成高校は誰もがその名を知っている日本有数の進学校だが、そこの野球部がなんと、都大会で3〜4回勝って、ベスト16になったこともあるそうだ。これは意外に凄いことで、もし長野県にいたなら毎回ベスト8くらい、メンバーがそろったら甲子園も見えてくるレベルだと思う。ノン・フィクションだが本当にどこまで真実なのか、など疑問は多々あるが、とにかく面白い。野球好きなら面白さは3倍以上にはなるだろう。高校野球経験者ならば10倍だ。守備の差がつかないので軽視する、どさくさに紛れてコールド勝ちをする、などハチャメチャな発想ばかりだが、発想の転換とはこういうことなのか、理論的に考えるとは、戦略や戦術策定における「選択と集中」など、ビジネスでも役に立つ知恵が多い。ゆえに企業研修でもテキストとして使われているそうだ。読み方によって娯楽小説にもなれば、高校野球の教本にも、ビジネス書にもなるという本の奥深さを改めて感じさせられた。







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